美d生活工房の酒井です。ハンガーラックを技術的に解説をする担当として、今回はパイプを取り上げたいと思います。
私たちの販売するハンガーラックは、パイプハンガーと呼ばれています。確かに、パイプの組み合わせで作られいて、パイプハンガーと言われるのもその通りだなと思います。
パイプはハンガーラックの中で大部分を占める部品ですが、そのパイプの強度はどのように考えらているのかをお話ししたいと思います。
【パイプの肉厚は厚いほうがいいわけではない。】
肉厚なほど下がる強度もある?
商品の説明では、「他店の商品は0.8mmで、当店のタフグランハンガーラックは1.2mmだから強いです」と書いています。タイトルと比べて「あれ?」と思いますよね。確かにパイプの肉厚は厚い方が強くなります。実際、当店の場合は、スタンダードなハンガーラックだと1.2mmのパイプを使っています。
でも、肉厚なのに下がる強度があります。これがどういうことかを説明していきましょう。
変形に対する強度を表す「たわみ」
強度という中には「たわみ」という考え方があります。
Googleで検索をすると「たわみは、重さ(荷重)により水平部材が変形することです。」と出てきます。
ハンガーラックなら、ハンガーをかける水平バーが洋服を掛けることによって変形することがたわみです。
パイプの中間に荷重(中間荷重)を加えてから、取り去ると元に戻れる最大荷重(引張強度)と考えられます。
「引張強度」に対する強度を計算してみると
引張強度には、計算式があるのですが、難しくて私もわからないので(笑)、結論を書かせてもらいます。
比較対象は、同じ長さや太さ、同じ形状、同じ材質のパイプです。
違うのは肉厚、1.8mm厚と2.4mm厚のもので比較してみます。
引張強度を計算した結果は、
肉厚2.4mm 500N(490kg)
肉厚1.8mm 700N(686kg)
となりました。
つまり、最大荷重で2.4mm厚の方が29%、引張強度が落ちることになります。
参考サイトです。
https://www.ashiba-pipe.com/2016/06/15/%E5%8D%98%E7%AE%A1%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%97-%E8%82%89%E5%8E%9A-1-8mm%E3%81%A82-4mm-%E9%81%B8%E3%81%B6%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%A9%E3%81%A3%E3%81%A1-%E3%80%80%E3%81%8B%E3%82%93%E5%A4%AA%E3%81%AE/
足場を組むためのパイプなので、ハンガーラックとは違うかもしれませんが、計算サイトもあり当店のハンガーラックのスペックを入力し2.4mm厚の場合と比較するとし2.4mm厚の方が引張強度は弱くなりました。
感覚的な話になってしまいますが、同じ太さで肉厚が厚いということは、断面は金属部分が多く、荷重が掛かって変形する部分も多いので、一度曲がってしまうと戻りにくいということになるのだと思います。(設計の専門ではないので、最終的に感覚的な話になって申し訳ありません。)
タフグランハンガーラックは軽くて破損と変形に強いパイプを使用
もう一点、肉厚が厚い方が、重量は重くなります。
つまり、肉厚が厚いパイプだと変形に弱くて重いということになります。
ちなみに肉厚が薄いパイプが強いというわけではありません。
逆に薄ければたわみの前に破損してしまうからです。
当店のハンガーラックは、強度を計算をして、軽くて破損と変形どちらにも強い、最適な肉厚のパイプを選んで、ハンガーラックに使用しています。
パイプの寸法公差を職人たちが調整する
スムーズに高さ調整できると…
つぎに、上下の高さ調節について説明したいと思います。
ハンガーラックの高さ調節は太いパイプと細いパイプが重なりあって、ネジで固定して高さ調整をするようになっています。
外パイプの内径と内パイプ外径に差がないほど、スムーズに高さ調整ができることはご理解いただけると思います。
スムーズということは、高さ調整の動作で出る振動も少なく、ハンガーラックに掛かる負担も少なくなり長く使えます。
実際のパイプでは、そうはならない。
ただ、実際には世の中ある全ての製品(ハンガーラック以外も)が設計どおりの寸法ではありません。
仮に20mmの太さのパイプでも多少の誤差があります。
設計上、このズレが認められる範囲を「寸法公差」と言います。
例えば直径20mmのパイプなら、±0.1mmはOKですよという部分が寸法公差です。
これは、20mmのパイプでも実際には19.9mm〜20.1mmまでバラツキあっても直径20mmのパイプとして問題はないという扱いです。
さらに、パイプ自体の歪み(完全にまっすぐではない)も存在します。
これでは、外パイプの内径と内パイプ外径に差がないという状態は、できる場合と出来ない場合が出てきてしまいます。
なので、組立式の大量生産品は、外パイプ内径と内パイプ外径の差を大きくしています。
そうすると高さ調整が問題なくできるのですが、スムーズに高さ調整ができなくなります。
パイプの精度と職人の調整
タフグランハンガーラックは、高さ調整がスムーズに動くように、パイプの直径と歪みは精度が高いものを使用しています。
寸法公差も内側パイプはマイナスの誤差のみ、外側パイプはプラス誤差のみをOKにしています。
さらに組立職人が、一つ一つ組み立てながら高さ調整の動きを確認し、パイプの歪みの修正を手で行っています。
全てが同じようにできている製品なら機械による調整も可能かもしれませんが、1台1台微妙な差があるパーツで組み立てられているハンガーラックには、人の手による調整が有効になります。
全てが同じようにできている製品なら機械による調整も可能かもしれませんが、1台1台微妙な差があるパーツで組み立てられrているハンガーラックには人のてによる調整が有効にになります。
【タフグランハンガーラックのパイプ】
頑丈なまま長く使える
設計段階からパイプの仕様をしっかり決め、そして組立工程でも職人の技でスムーズに動くようにすることによって、頑丈なまま、長く使えるハンガーラックを作り出しています。
それが私たちのタフグランハンガーラックです。